自然科学系
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自然科学系 化学領域
界面活性剤、イオン液体、両親媒性高分子、金属ナノ粒子などソフトマターの分子集合体に関する研究
吉村 倫一 教授段階基礎実証化実用化準備社会実装界面活性剤やイオン液体、両親媒性高分子、液晶、金属ナノ粒子などソフトマターの性質をさまざまな手法を用いて調べ、さらに、水溶液中におけるこれらの分子集合体の ナノ構造を X 線・中性子小角散乱、光散乱、透過型電子顕微鏡などで詳しく調べています。小角散乱は SPring-8やJ-PARCなどの最先端の大型装置を使用しています。
最近では、泡沫やエマルション・可溶化の構造および安定性に関する研究に積極的に取り組んでいます。また、両親媒性化合物を保護剤として金属ナノ粒子を調製し、還元反応やラジカル消去反応などにおける触媒活性に関する研究も行っています。
これまでに化学系企業(化粧品やトイレタリー関連を含む)との共同研究を積極的に行ってきて、実用化を含む高い成果を生み出してきました。アピールポイント
高性能かつ高機能性な新規材料の開発を目指して、界面活性剤・イオン液体・両親媒性高分子などの分子設計・合成を行い、これらの水溶液中での物性(界面吸着や集合体形成)を詳細に調べています。
最近では、ジェミニ型界面活性剤、単一鎖長ポリオキシエチレン系非イオン界面活性剤、ヒドロキシ基含有アミノ酸系界面活性剤、アダマンタン型両親媒性イオン液体、デンドリマー型両親媒性高分子、乳酸菌発酵米などの新規材料開発を行いました。
物性は、電気伝導度や粘度による溶解度(クラフト温度、曇点)静的表面張力(Wilhelmy法、Pendant drop法)、動的表面張力、接触角など幅広く調べています。水溶液中で形成するミセルや液晶などの集合体の構造は、動的・静的光散乱、低温透過型電子顕微鏡、粘度などのラボレベルの実験による評価に加え、SPring-8のX線小角散乱やJ-PARCの中性子小角散乱などの世界最先端の大型機器を用いて、詳細な解明を行っています。また、界面活性剤などがつくる泡沫の構造や安定性について、小角散乱などの最先端の技術により評価を行っています。さらに、乳化や可溶化に関する研究にも取り組んでいます。
現在、企業や大学・研究機関との共同研究にも積極的に取り組んでいます。これまでに私たちのところで物性評価した界面活性剤や高分子が、すでに化粧品や洗浄剤に使われています。今後も、化粧品やトイレタリー関連を含む化学系企業との共同研究を希望します。 -
自然科学系 化学領域
酸素を用いた末端アルケンの触媒的な酸化によるアルデヒド合成
浦 康之 教授段階基礎実証化実用化準備社会実装逆マルコフニコフ型ワッカー型酸化とよばれる、パラジウム/銅/マレイミド触媒系を用いた、芳香族アルケン(ベンゼンなどの芳香環を置換基にもつアルケン)からのアルデヒド合成反応を開発しました(図)。酸化剤として、安全で安価な常圧の酸素を用いることができ、常温に近い穏やかな温度(40℃)で反応が進行します。現在は、工業的により重要な、脂肪族アルケン(アルキル基を置換基にもつアルケン)からのアルデヒド合成反応の開発にも取り組んでいます。
アピールポイント
アルデヒドは溶剤、プラスチックの可塑剤(プラスチックに柔軟性を与えて加工しやすくするための添加剤)、洗剤などの原料となる重要な有機分子です。現在の工業的なアルデヒドの製造には、末端アルケンを原料として、コバルトまたはロジウム触媒の存在下、高圧の合成ガス(一酸化炭素と水素の混合ガス、10~250気圧)を高温条件下(100~175℃)で反応させるヒドロホルミル化とよばれる方法が用いられています(図)。一方、私達が開発した逆マルコフニコフ型ワッカー型酸化では、パラジウム/銅/電子不足な環状アルケン(マレイミドなど)を組み合わせた触媒系を用いることによって、常圧の酸素および穏和な条件下(40℃)で芳香族アルケンからアルデヒドを得ることができます。ヒドロホルミル化に比べて、炭素鎖が一つ短いアルデヒドが生成します。この反応では、高圧の合成ガス(合成ガス中の一酸化炭素は毒性が高く、水素は非常に爆発しやすい)や高温の条件を用いる必要がありません。触媒活性のさらなる向上や、原料の適用範囲を広げていくこと(芳香族アルケンだけでなく、工業的により重要な脂肪族アルケンを原料として利用できるようにする)など、乗り越えるべき今後の課題はまだまだ多いですが、新たに見出した反応は、従来のヒドロホルミル化よりも安全で環境低負荷なアルデヒド合成法となるポテンシャルを秘めています。
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自然科学系 化学領域
生体内の金属酵素の機能発現の分子機構の解明
藤井 浩 教授段階基礎実証化実用化準備社会実装私たちが必要とする金属イオンは、鉄、銅などわずか十数種類ですが、金属酵素が行う反応の種類は莫大な数になります。
どうしてわずかな金属イオンからこんなにたくさんの種類の反応ができるようになるのでしょうか?
私たちの研究グループでは、この問題に答えるため金属酵素の機能がどのような機構で発現されているのかを分子レベルで研究しています。アピールポイント
私たちの体の中にはたくさんの金属酵素と呼ばれるタンパク質が存在し、私たちの生命活動を支えています。
金属酵素は、金属イオンを含む酵素を意味し、多くの場合、この金属イオンが酵素反応と直接関係しています。例えば、体の中の鉄分が足りなくなると貧血を起こすのも、金属酵素(タンパク質)の関与するところです。私たちが必要とする金属イオンは、鉄、銅などわずか十数種類ですが、金属酵素が行う反応の種類は莫大な数になります。
どうしてわずかな金属イオンからこんなにたくさんの種類の反応ができるようになるのでしょうか?
私たちの研究グループでは、この問題に答えるため金属酵素の機能がどのような機構で発現されているのかを分子レベルで研究しています。 -
自然科学系 生物科学領域
外来種スクミリンゴガイの総合的管理技術の開発
遊佐 陽一 教授段階基礎実証化実用化準備社会実装世界および日本の侵略的外来種ワースト100リストに掲載されているスクミリンゴガイ(ジャンボタニシ)の個体群管理とイネの食害回避の研究をしています。
研究の内容
具体的には、1)スクミリンゴガイのさまざまな捕食者を明らかにし、河川や池、水路などでは捕食者相が本種の密度低減に役立っていることを明らかにしました。また、2)好適な環境の保全によって豊かな捕食者相を保ち、さらに活性化させることで本種の個体群を管理する可能性について検討しています。3)最近では農水省のプロジェクトで、高い誘引効果が長期間持続する誘引餌を見出し、それを利用した箱型トラップを企業と開発しました。 温暖化などのために、国内外でスクミリンゴガイによるイネの食害が今後も増加することが予測されるため、本種の総合的管理技術(IPM)確立に向けた研究を推進しています。
アピールポイント
・スクミリンゴガイの捕食者については、コイや合鴨、スッポンなど個々の種の利用だけでなく、自然水路の環境保全や人工水路における水深の維持など適切な環境管理によって、捕食者相を維持・活性化し、外来種の管理に役立てるという新たな試みを進めています。
・米ぬか、コイの餌という誘引力の高い餌に加え、米こうじを入れることによって1週間程度効果が持続するミックス餌を開発しました(農水省のスクミリンゴガイ被害防止マニュアルに掲載)。今後、さらに誘引性や持続力の高い餌の開発を行い、それを用いた貝の誘引や稲の被害回避につなげていきます。
・逃亡防水装置付き箱型トラップは、「スクミッチ」という名称で、大栄工業株式会社から発売されています(特許取得済み)。これとミックス餌を用いて、水田の貝を減らすことに成功しています。現在、さらに誘引効果が高く、維持管理の楽なトラップの開発を進めています。
・その他、卵の孵化、越冬率、イネの被害リスク評価、生態系への影響評価など、スクミリンゴガイとイネの特性に基づいた技術開発や影響評価を行っています。
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自然科学系 環境科学領域
数理的手法を用いた生物集団の構造と進化の研究
高須 夫悟 教授段階基礎実証化実用化準備社会実装数理の視点から生物学を研究しています。生物個体の増減(個体群動態)一般に関する数理的研究です。
アピールポイント
物理学などでは数理的手法は無くてはならない研究手法ですが、同じ手法を生物学に適用し、生物集団の構造(空間分布など)と進化(適応形質のダイナミクス)に関する数理的研究に取り組んでいます。個体群動態は病害虫・感染症の制御などへの応用も可能な研究分野です。また計算機の中で仮想的な生物個体の出生・死亡・空間移動・適応形質の変化などを実装する個体ベースモデルを効率的にシミュレートするためのアルゴリズム開発にも取り組んでいます。