工学系

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  • 工学系 工学領域

    キノリンを機能素子とする蛍光性配位子を用いた金属イオンおよびリン酸種の検出

    三方 裕司 教授
    段階
    基礎
    実証化
    実用化準備
    社会実装

    自然界や生体内に存在する微量の金属イオンおよび無機イオン、さらには有機分子を感度良く簡便に検出・定量する技術が求められています。特に、蛍光シグナルの変化(①蛍光強度の増大、②蛍光強度の減少、③蛍光波長の移動など)を用いて標的イオンや標的分子を検出する方法は、高い感度および標的分子特異性などの点から注目されています。私の研究室では、含窒素複素族化合物であるキノリンの特性を活用した蛍光センサーについて研究を行っています。これまで、亜鉛イオン、カドミウムイオン、リン酸およびピロリン酸などを特異的に検出できるさまざまな化合物を開発しました。その中で、蛍光センサー分子の一部の構造を少し変化させるだけで標的金属イオンが亜鉛イオンからカドミウムイオンへ劇的に変化する例もいくつか報告しています。また、それぞれの系について、蛍光応答特異性発現のメカニズムをX線結晶構造解析および理論計算から明らかにしました。

    アピールポイント

    これまで、できるだけ単純な構造を有する化合物の探索から研究をスタートさせることを重要視してきました。シンプルな構造をもつ化合物は、安価な原料から簡便な合成法で調達でき、また容易に多くの誘導体へ進化・発展させることが可能である点で優位性があります。以下に最近の研究例を2例紹介します。

    1. 八座配位子を用いたカドミウムイオン蛍光センサーの開発(Dalton Trans.、 3840-3852 (2019)) 三つのメトキシ(CH3O-)基を導入したキノリン部位を四つ有し、さらに分子の中心に窒素原子と酸素原子をそれぞれ二つずつ導入した八座配位子であるTriMeOBAPTQという化合物は、メタノールとHEPESバッファー(9:1)の混合溶媒中でカドミウムイオンに特異的な蛍光応答を示しました。

    2. 一つの不斉炭素の立体配置の反転による蛍光標的金属の変換(Inorg.Chem.、 in press (2020)) 1、2-ジフェニルエチレンジアミン骨格を有する6-MeOTQPh2EN という化合物には、分子中に存在する二つの不斉炭素原子の立体配置により、(R、R)-体、(S、S)-体、メソ体の3種類の化合物が存在します。(R、R)-体と(S、S)-体は鏡像関係にあり不斉要素以外の特性は全く同じですので、本研究では(S、S)-体とメソ体を合成して金属イオンに対する蛍光応答を調べました。その結果、(S、S)-体は亜鉛イオン、メソ体はカドミウムイオン特異的な蛍光センサーとなっていることが明らかとなりました。

  • 工学系 工学領域

    ヒト脳の感覚・運動・認知機能を数値化し、向上させる技術

    中田 大貴 教授
    段階
    基礎
    実証化
    実用化準備
    社会実装

    脳波や近赤外光線分光法(NIRS)等を用いた脳からの生体情報を計測する方法と、経頭蓋磁気刺激法(TMS)や経頭蓋電気刺激法(tES)を用いて脳に刺激を与え、その反応性を計測する方法により、感覚・運動制御・運動学習・認知機能等に関する脳内メカニズムの解明を目指して研究を進めています。また、ハイスピードカメラ等を用いて様々な動作を対象とし、実際にどのように運動学習が進んでいるのか、動作メカニズムに関する研究も行なっています。
    共同研究先として、早稲田大学スポーツ科学学術院・早稲田大学人間科学学術院・脳情報通信融合研究センター(CiNet)・自然科学研究機構 生理学研究所・順天堂大学スポーツ健康科学部・立命館大学スポーツ健康科学部・車いすバスケットボール男子日本代表チームなど、企業とは生活用品メーカー・電気機器メーカー・プロ野球球団などと共同研究実績があります。

    本研究室が扱っている研究領域

    運動遂行と運動抑制に関わる脳活脳活動部位

    車いすバスケットボールのフリースローの正確性に関する研究

    アピールポイント

    本研究ではヒト脳の感覚・運動・認知機能の個人差について、実験心理学・脳神経科学・遺伝学・スポーツ科学の研究手法を組み合わせて検証し、多様なヒトの個性を理解する取り組みをしており、学術的独自性に富んだものです。遺伝子多型の研究においては、アルツハイマー型認知症や注意欠陥多動性障害(ADHD)などといった病気や発達障害における脳神経活動との関連について、これまで数多く報告されてきました。本研究では健常者の多様性を対象とし、認知行動・脳神経・遺伝子レベルより、多階層的に解明できる点において創造性があります。また実験データを得るだけではなく、実際のパフォーマンス向上に向けた応用・実践研究も含めており、体育や一般スポーツの現場、プロスポーツの現場に至るまで、役立つ貴重な情報をフィードバックすること目指しています。運動スキル獲得や運動学習の機序解明という観点からすると、リハビリテーション科学・神経科学・認知科学等においても重要な研究内容であり、他分野にも新しい知見を提供できると考えております。

  • 工学系 工学領域

    温熱環境の快適性・健康性に関する研究

    久保 博子 教授
    段階
    基礎
    実証化
    実用化準備
    社会実装

    健康で快適な生活を創造するための用件について以下の3つの視点で住環境学、人間工学的立場から、物理環境の評価と、その空間に滞在している様々な人間の生理的反応、心理的反応、行動的反応を計測して環境の人体への影響を検討し評価指標を提案する研究を行っています。さらに、長寿社会の視点から、高齢者の健康に配慮し、熱中症やヒートショックによる健康被害を避け、QOLの向上に向けた住環境整備をめざして、高齢者の居住実態を調査しています。
    1. 温熱環境の快適性について個人差にも着目した検討
    2. 高齢者の温熱適応能力から見た健康で安全な空間を構成するためのQOLの向上に向けた住環境の検討
    3. 睡眠への室内環境や生活行動が及ぼす影響に関する検討

    熱中症予防実験時のサーモカメラによる体表面温度

    高齢者のQOLに関する調査

    マットレスでの寝姿勢(体圧分布)

    アピールポイント

    1.  温熱環境の快適性に関する研究として、特にライフスタイルや生活行動など年齢や性別、温熱弱者などの在室者の多様性によって温熱環境評価の個人差に関する人工気候室を用いた実験的検討を行っています。これは平均的な人に関する研究が多い中で、個人差や生活に着目している事が独自であり、足元の冷えやすい女性の快適性に着目した男女差や、住宅やオフィスでの居住者や執務者の快適性のように、生活実態に即した生活者の仕手での住環境の整備や、対流や放射など冷暖房方式にも注目した空調機器の開発に貢献しています。また、健康を阻害する熱中症の人体への影響やその対策についても検討しています。

    2.  生活弱者と言える高齢者の安全、安心空間のために、環境、生活行動に着目して、検討しています。環境視点では、浴室環境、寝室環境など人間の生活行動におけるヒートショックや熱中症対策、快眠への影響など温熱環境の健康影響に関する実験的検討と実際の住宅での温熱環境の実測等を行い、生活環境の快適性の提案をしています。さらに、高齢者のQOLを向上させる為の環境整備について、都市部や山間部で調査を行い、個人個人に対応したきめ細かい検討を行っています。

    3.  睡眠の生理学的研究、病理学的研究は日本ではかなり進められていますが、睡眠環境に関する研究は国際的にみても稀少で明らかになっていない点が多いようです。特に、健康志向に伴い、様々な健康グッズが販売されていますが、これらに対する明確な科学的検証は行われていません。快眠のための睡眠環境について、睡眠時の寝床気候の調整に関する人工気候室実験および実測調査による空調設備など環境工学、設備工学分野への応用が期待されます。

  • 工学系 工学領域

    建築から都市へのデザイン

    長田 直之 教授
    段階
    基礎
    実証化
    実用化準備
    社会実装

    建築の設計を分析・実践しています。単体の建築ではなく、都市へ、社会へと接続される建築について考えています。特に、集合住宅は、都市を構成する重要なインフラで、コーポラティブをはじめ多くの集まってすむ場を作っています。近年は、中国でのプロジェクトも多く、日本のみならず世界で建築・都市を考える研究と実践を行っています。

    Xiaomi Wuhan Head Office

    Yo

    アピールポイント

    建築の面白さを具体的に建築を設計する建築家ならではの視点や知見を提供することができる。また、単体の建築ではなく、都市や社会構造のなかでどのような役割を建築が果たさなければならないかという問題についての実践的な研究の成果を提供することができる。現代美術や建築の近代以降の美術史のながれから、空間という概念についての研究の成果を提供することができる。

  • 工学系 工学領域

    温かさ・冷たさを伝える技術

    佐藤 克成 准教授
    段階
    基礎
    実証化
    実用化準備
    社会実装

    温かさと冷たさを人に感じさせる、温度感覚を再現する装置を開発しています.人の温度感覚は刺激位置の判別能力が低いことに着目し、温かいと冷たいそれぞれの刺激用の素子を並置した装置を提案しています.さらに、人は温度変化を敏感に知覚する特性を利用し、絶対的な温度ではなく温度変化量を制御する手法を提案しています.これら提案手法により、従来よりも小型・軽量に実装でき、消費電力が少なく、そして応答性の高い装置を実現しました.
    本技術を活用し、温度だけでなく振動や圧の感覚を再現する触感モジュールの開発にも取り組みました.触感モジュールの開発は、JST ACCEL「身体性メディア」プロジェクトとして、東京大学、慶應義塾大学、電気通信大学、アルプスアルパイン株式会社、日本メクトロン株式会社と共同で行いました.

    触感モジュールによる温度感覚再現

    温度と振動の感覚を再現する触感モジュール

    温刺激と冷刺激を並置した構成による刺激方法

    アピールポイント

    触感を再現する装置は、ゲーム機やスマートフォンといった電子機器類、およびアミューズメントパークなどで実用化されています.近年では、バーチャルリアリティ用の感覚フィードバック装置としての活用が進んでいます.これら従来の触感再現装置は、主に振動によって触感を表現しています.それに対し提案技術では、振動だけでなく温度の感覚を加えることで、再現される触感の種類を増加させることができます.
    温度の感覚を再現する装置は提案技術以外にも存在しています.それらに対するこの研究の最大の特徴は、小型・軽量に実装できることです.例えば、指先に振動と温度の感覚を再現する触感モジュールでは、大きさは14mm x 27mm x 8mm、重さは約7gfで実現しています.従来の技術では、放熱のための機構が必要であり、体積も重量も4倍以上必要でした.そのような大型で重い装置は用途が限られてしまいます.
    小型・軽量な温度感覚の再現装置が実現されることで、触感再現以外の分野における活用も期待できます.例えば、モバイル・ウェアラブル端末における情報フィードバックが考えられます.従来は音や振動により行われていますが、これらに代わる、音も振動も生じない静かな情報フィードバック手法として活用できます.他には健康機器が考えられます.身体の一部に対する温冷刺激を行うことで、その部位の血流を促進する効果が期待できます.

  • 工学系 工学領域

    生体情報【動き・力】の数値化から、ヒトの”動作特性”を評価する

    大高 千明 専任講師
    段階
    基礎
    実証化
    実用化準備
    社会実装

    ヒトの生体情報の要素である、「動き」や「力」について、主に2つの評価方法を用いて客観的に捉え数値化することによって、巧みな運動制御のメカニズム解明や、特性評価・比較検討を行います。評価方法1つ目は、動きを複数のハイスピードカメラで撮影し、空間内座標から二次元あるいは三次元的に定量化することによって運動学的特性を示します。2つ目は、動きがどのような力によって生み出されているのか、筋力や筋活動、フォースプレートや足底圧計測を指標として用いることで、運動力学的な特性を明らかにします。
    このような運動学・運動力学的手法を用いて、神戸大学、芝浦工業大学、奈良教育大学、武庫川女子大学の先生方と共同研究を進めており、さまざまな研究テーマにおいて、ヒトの“動作特性”を評価検討し、モノづくりへの創造・応用を考えています。

    モーションキャプチャシステムによる動作計測の様子

    筋電図及びSWEを用いた「力を抜く」制御における筋動態特性

    アピールポイント

    ヒトの運動制御を明らかにする基礎研究から、健康医工学、人間工学、子ども・発育発達の場面まで、幼少期の子どもたちから高齢者を対象に、医療やリハビリテーション、教育現場など、さまざまな領域や還元場面へ、幅広い応用が考えられます。
    下記に、研究事例を紹介します。

    ・健康医工学
     高齢者の歩行機能を足底圧計測システムによって評価するとともに、下肢の感覚・認知機能を神経生理学的評価し、これらの関連性について検討しています。足裏に一定時間の微弱電流刺激を継続的に行うことによって、神経可塑性に起因する感覚・認知・歩行機能への効果検証をしており、新たなフレイル予防法の開発を目指しています。