あ行の研究者

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  • 生活環境科学系 臨床心理学領域

    ぐるぐる思考の臨床心理学

    梅垣 佑介 准教授
    段階
    基礎
    実証化
    実用化準備
    社会実装

    自分自身の否定的な側面や感情、症状について繰り返しネガティブに考えてしまう思考を反すう思考と呼びます。一般的には「ぐるぐる思考」とも呼ばれるものです。
    ぐるぐる思考は、困難な外的状況や内的な感情を回避する機能を持ち、結果としてうつ病や不安症といった精神的不健康につながることが報告されています。
    梅垣研究室では、ぐるぐる思考をターゲットとした臨床心理学的支援法である反すう焦点化認知行動療法に注目し、創始者である英国University of ExeterのEdward Watkins教授の協力のもと、日本での展開を進めています。対面・個別支援の他、反すう・心配傾向を示す成人を対象としたうつ・不安の予防的研究も行っています。また、日本人における反すう思考の特徴について、調査研究を実施しています。

    アピールポイント

    ぐるぐる思考は誰しもに見られる、困難な事象に対する自然な反応です。ですが、それが過剰になった時やバランスを崩した時に、精神的不健康につながると考えられています。ぐるぐる思考をターゲットにした支援法や予防法は、多くの人にメリットをもたらす可能性があると考えられます。
    うつ病や不安症は、精神障害の中でも有病率が比較的高く、一般臨床やコミュニティ・サンプルにおいてもしばしばみられる精神障害です。これらに共通するプロセスであるぐるぐる思考をターゲットとすることで、うつ病や不安症を改善できたり発症を予防できたりすることが分かれば、多くの人が享受できるとても大きな発見になると考えています。

  • 自然科学系 化学領域

    酸素を用いた末端アルケンの触媒的な酸化によるアルデヒド合成

    浦 康之 教授
    段階
    基礎
    実証化
    実用化準備
    社会実装

    逆マルコフニコフ型ワッカー型酸化とよばれる、パラジウム/銅/マレイミド触媒系を用いた、芳香族アルケン(ベンゼンなどの芳香環を置換基にもつアルケン)からのアルデヒド合成反応を開発しました(図)。酸化剤として、安全で安価な常圧の酸素を用いることができ、常温に近い穏やかな温度(40℃)で反応が進行します。現在は、工業的により重要な、脂肪族アルケン(アルキル基を置換基にもつアルケン)からのアルデヒド合成反応の開発にも取り組んでいます。

    アピールポイント

    アルデヒドは溶剤、プラスチックの可塑剤(プラスチックに柔軟性を与えて加工しやすくするための添加剤)、洗剤などの原料となる重要な有機分子です。現在の工業的なアルデヒドの製造には、末端アルケンを原料として、コバルトまたはロジウム触媒の存在下、高圧の合成ガス(一酸化炭素と水素の混合ガス、10~250気圧)を高温条件下(100~175℃)で反応させるヒドロホルミル化とよばれる方法が用いられています(図)。一方、私達が開発した逆マルコフニコフ型ワッカー型酸化では、パラジウム/銅/電子不足な環状アルケン(マレイミドなど)を組み合わせた触媒系を用いることによって、常圧の酸素および穏和な条件下(40℃)で芳香族アルケンからアルデヒドを得ることができます。ヒドロホルミル化に比べて、炭素鎖が一つ短いアルデヒドが生成します。この反応では、高圧の合成ガス(合成ガス中の一酸化炭素は毒性が高く、水素は非常に爆発しやすい)や高温の条件を用いる必要がありません。触媒活性のさらなる向上や、原料の適用範囲を広げていくこと(芳香族アルケンだけでなく、工業的により重要な脂肪族アルケンを原料として利用できるようにする)など、乗り越えるべき今後の課題はまだまだ多いですが、新たに見出した反応は、従来のヒドロホルミル化よりも安全で環境低負荷なアルデヒド合成法となるポテンシャルを秘めています。

  • 工学系 工学領域

    生体情報【動き・力】の数値化から、ヒトの”動作特性”を評価する

    大高 千明 専任講師
    段階
    基礎
    実証化
    実用化準備
    社会実装

    ヒトの生体情報の要素である、「動き」や「力」について、主に2つの評価方法を用いて客観的に捉え数値化することによって、巧みな運動制御のメカニズム解明や、特性評価・比較検討を行います。評価方法1つ目は、動きを複数のハイスピードカメラで撮影し、空間内座標から二次元あるいは三次元的に定量化することによって運動学的特性を示します。2つ目は、動きがどのような力によって生み出されているのか、筋力や筋活動、フォースプレートや足底圧計測を指標として用いることで、運動力学的な特性を明らかにします。
    このような運動学・運動力学的手法を用いて、神戸大学、芝浦工業大学、奈良教育大学、武庫川女子大学の先生方と共同研究を進めており、さまざまな研究テーマにおいて、ヒトの“動作特性”を評価検討し、モノづくりへの創造・応用を考えています。

    モーションキャプチャシステムによる動作計測の様子

    筋電図及びSWEを用いた「力を抜く」制御における筋動態特性

    アピールポイント

    ヒトの運動制御を明らかにする基礎研究から、健康医工学、人間工学、子ども・発育発達の場面まで、幼少期の子どもたちから高齢者を対象に、医療やリハビリテーション、教育現場など、さまざまな領域や還元場面へ、幅広い応用が考えられます。
    下記に、研究事例を紹介します。

    ・健康医工学
     高齢者の歩行機能を足底圧計測システムによって評価するとともに、下肢の感覚・認知機能を神経生理学的評価し、これらの関連性について検討しています。足裏に一定時間の微弱電流刺激を継続的に行うことによって、神経可塑性に起因する感覚・認知・歩行機能への効果検証をしており、新たなフレイル予防法の開発を目指しています。