さ行の研究者

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  • 生活環境科学系 食物栄養学領域

    グルテンフリー食品の開発および品質改善に関する研究

    齋藤 公美子 助教
    段階
    基礎
    実証化
    実用化準備
    社会実装

    近年、セリアック病やグルテン過敏症、小麦アレルギー患者の増加、さらには健康志向の高まりを背景に、グルテンフリー(GF)製品の需要が拡大しています。その中で、日本の主食であり、唯一自給可能な穀物である米を活用した米粉パンの研究が進められています。しかし、米粉パンはグルテンを含まないため、小麦粉パンに比べて膨化性の低下や保存中の品質劣化が課題となっています。現在市販されている米粉パンは、食品添加物や新規材料を使用することで品質向上を図っていますが、これに伴う高コスト化が新たな課題となり、製品の市場拡大を制約しています。
    これらの課題に対し、我々の研究グループは、米の特性である「デンプンの糊化」による増粘作用に着目し、製造工程において高温水を用いる「高温水添加製パン法」を開発しました。この製法により、特別な材料を使用せず、加水操作の工夫のみで生地に強固な骨格を形成し、膨化性を向上させることが明らかになっています。さらに、この方法はパンの老化を抑制する可能性も期待されています。

    アピールポイント

    「高温水添加製パン法」は、穀物が本来持つ調理特性を活かした、簡便かつ費用対効果の高いGFパンの製造技術です。従来の研究では、GF製品の品質向上を目的に、増粘剤などの添加物や新規材料の探索が主流でした。本研究では、米粉パンの製造工程そのものに着目し、技術的アプローチを通じて製造コストの削減と品質改善の両立を目指しています。
    さらに、この製パン法は米粉に限らず、デンプンを主体とした多種多様なGF穀物粉にも適用可能です。そのため、他の穀物の新たな用途開発を促進し、食の選択肢の多様化に貢献できる可能性があります。
    また、近年、穀物に含まれる機能性成分が注目されており、それらの摂取による生活習慣病予防効果が報告されています。穀物粉を主成分とするパンの開発は、栄養価の高い主食を提供する新たな可能性を拓くものであり、穀物粉の新規用途としても期待されます。これにより、国内の米や穀物の消費拡大を促し、農業・食品産業の発展や国民の健康向上にも寄与すると考えられます。
    <主な研究テーマ>
    1. GF穀物粉に適した製パン法の開発
    各種GF穀物粉の物性に基づき、最適な製パン技術を検討・開発することで、高品質なGF製品の実現を目指しています。特に、穀物デンプンの糊化温度やゲル化特性を応用した製法の開発に取り組んでいます。
    2. GF製品の老化抑制に関する研究
    GF製品の保存中の品質劣化は、主にデンプンの老化によって引き起こされ、食感や風味に大きな影響を与えます。これに対して、焼成条件や保存条件の最適化など調理過程によって老化抑制に寄与する要因を探索しています。
    3. 食品企業との共同研究によるGF製品の開発
    産学連携を通じて、研究成果の実用化を目指したGF製品の開発を進めています。消費者ニーズに基づいた新しいGF製品の研究を推進し、産業界との協力を強化することで、社会的課題の解決と未利用穀物や地域資源を活用した持続可能な食品開発を目指しています。

  • 生活環境科学系 住環境学領域

    文化財建造物修理

    坂井 禎介 専任講師
    段階
    基礎
    実証化
    実用化準備
    社会実装

    文化財建造物の修理の設計監理の実務を10年近く行ってきました。今後も文化財修理等に関わっていきたいと思っています。その修理技術の比較検討、修理事例の収集、などを行う予定です。また、古い建物修理に関するご相談も受け付けられます。

    アピールポイント

    前職の文化財建造物保存技術協会で、以下の修理に携わりました。
    重要文化財 諸戸家住宅主屋ほか5棟修理事業(2012.4~2020.4)
    重要文化財 冨吉建速神社本殿及び八劔社本殿保存修理事業(2021.6~2022.3)
    重要文化財 愛知県庁舎保存修理(調査工事)事業(2021.6~2022.3)
    重要文化財 旧金比羅大芝居 耐震対策事業(2020.12~2022.3)
    広島市指定重要文化財 広島東照宮本地堂保存修理事業(2021.7~2022.8)
    重要文化財 滝山東照宮本殿ほか2棟保存修理事業(2021.9~2022.8)

  • 工学系 工学領域

    温かさ・冷たさを伝える技術

    佐藤 克成 准教授
    段階
    基礎
    実証化
    実用化準備
    社会実装

    温かさと冷たさを人に感じさせる、温度感覚を再現する装置を開発しています.人の温度感覚は刺激位置の判別能力が低いことに着目し、温かいと冷たいそれぞれの刺激用の素子を並置した装置を提案しています.さらに、人は温度変化を敏感に知覚する特性を利用し、絶対的な温度ではなく温度変化量を制御する手法を提案しています.これら提案手法により、従来よりも小型・軽量に実装でき、消費電力が少なく、そして応答性の高い装置を実現しました.
    本技術を活用し、温度だけでなく振動や圧の感覚を再現する触感モジュールの開発にも取り組みました.触感モジュールの開発は、JST ACCEL「身体性メディア」プロジェクトとして、東京大学、慶應義塾大学、電気通信大学、アルプスアルパイン株式会社、日本メクトロン株式会社と共同で行いました.

    触感モジュールによる温度感覚再現

    温度と振動の感覚を再現する触感モジュール

    温刺激と冷刺激を並置した構成による刺激方法

    アピールポイント

    触感を再現する装置は、ゲーム機やスマートフォンといった電子機器類、およびアミューズメントパークなどで実用化されています.近年では、バーチャルリアリティ用の感覚フィードバック装置としての活用が進んでいます.これら従来の触感再現装置は、主に振動によって触感を表現しています.それに対し提案技術では、振動だけでなく温度の感覚を加えることで、再現される触感の種類を増加させることができます.
    温度の感覚を再現する装置は提案技術以外にも存在しています.それらに対するこの研究の最大の特徴は、小型・軽量に実装できることです.例えば、指先に振動と温度の感覚を再現する触感モジュールでは、大きさは14mm x 27mm x 8mm、重さは約7gfで実現しています.従来の技術では、放熱のための機構が必要であり、体積も重量も4倍以上必要でした.そのような大型で重い装置は用途が限られてしまいます.
    小型・軽量な温度感覚の再現装置が実現されることで、触感再現以外の分野における活用も期待できます.例えば、モバイル・ウェアラブル端末における情報フィードバックが考えられます.従来は音や振動により行われていますが、これらに代わる、音も振動も生じない静かな情報フィードバック手法として活用できます.他には健康機器が考えられます.身体の一部に対する温冷刺激を行うことで、その部位の血流を促進する効果が期待できます.

  • 工学系 工学領域

    温熱環境の快適性・健康性に関する研究

    芝﨑 学 教授
    段階
    基礎
    実証化
    実用化準備
    社会実装

    健康で快適な生活を創造するための用件について以下の3つの視点で住環境学、人間工学的立場から、物理環境の評価と、その空間に滞在している様々な人間の生理的反応、心理的反応、行動的反応を計測して環境の人体への影響を検討し評価指標を提案する研究を行っています。さらに、長寿社会の視点から、高齢者の健康に配慮し、熱中症やヒートショックによる健康被害を避け、QOLの向上に向けた住環境整備をめざして、高齢者の居住実態を調査しています。
    1. 温熱環境の快適性について個人差にも着目した検討
    2. 高齢者の温熱適応能力から見た健康で安全な空間を構成するためのQOLの向上に向けた住環境の検討
    3. 睡眠への室内環境や生活行動が及ぼす影響に関する検討

    熱中症予防実験時のサーモカメラによる体表面温度

    高齢者のQOLに関する調査

    マットレスでの寝姿勢(体圧分布)

    アピールポイント

    1.  温熱環境の快適性に関する研究として、特にライフスタイルや生活行動など年齢や性別、温熱弱者などの在室者の多様性によって温熱環境評価の個人差に関する人工気候室を用いた実験的検討を行っています。これは平均的な人に関する研究が多い中で、個人差や生活に着目している事が独自であり、足元の冷えやすい女性の快適性に着目した男女差や、住宅やオフィスでの居住者や執務者の快適性のように、生活実態に即した生活者の仕手での住環境の整備や、対流や放射など冷暖房方式にも注目した空調機器の開発に貢献しています。また、健康を阻害する熱中症の人体への影響やその対策についても検討しています。

    2.  生活弱者と言える高齢者の安全、安心空間のために、環境、生活行動に着目して、検討しています。環境視点では、浴室環境、寝室環境など人間の生活行動におけるヒートショックや熱中症対策、快眠への影響など温熱環境の健康影響に関する実験的検討と実際の住宅での温熱環境の実測等を行い、生活環境の快適性の提案をしています。さらに、高齢者のQOLを向上させる為の環境整備について、都市部や山間部で調査を行い、個人個人に対応したきめ細かい検討を行っています。

    3.  睡眠の生理学的研究、病理学的研究は日本ではかなり進められていますが、睡眠環境に関する研究は国際的にみても稀少で明らかになっていない点が多いようです。特に、健康志向に伴い、様々な健康グッズが販売されていますが、これらに対する明確な科学的検証は行われていません。快眠のための睡眠環境について、睡眠時の寝床気候の調整に関する人工気候室実験および実測調査による空調設備など環境工学、設備工学分野への応用が期待されます。